四塩化ケイ素(SiCl4)を原料とした多様なシリコン材料の生成と速度過程

(文責: 3年生MK、4年生MI)

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ケイ素(学びの場.com)
▶「学校の化学の授業で化学平衡を習いました。圧力や温度、触媒などを使うと平衡が 変わる事は分かったのですが…同じ反応式なのに、反応条件を変える事で形の違う物質って作れるのですか?

当学科では四塩化ケイ素という物質の反応式を使い、反応条件をいくつか変える事で結晶の形を変える研究をしています。全く別物ではないのですが、顕微鏡でよく見ると…反応条件の違いで色々な結晶の形になるのです。ではこの研究をより詳しく解説してみます。

■反応式と産業界での現状

四塩化ケイ素(SiCl4) は、金属亜鉛(沸点907℃)の蒸気で還元され、シリコンが生成します。反応式は、

SiCl4 + 2Zn = Si + 2ZnCl2

で表す事ができます。

ケイ素は原子番号14の元素で、このケイ素の酸化物である二酸化ケイ素は窓ガラスの原料にもなっています。ケイ素はどのような見た目をしているのか、写真を見てみましょう。

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図1 ケイ素 (引用:学びの場.com)

きれいな銀色をしていますね。ではここで、四塩化ケイ素についてどのような物か写真を見てみましょう。

silicon-tetrachloride

図2 四塩化ケイ素 (引用:Shanghai Trustin Chemical Co., Ltd.)

驚くかもしれませんが、四塩化ケイ素は無色透明な液体です。これに金属亜鉛の蒸気をあてる事で還元されシリコンができます。この反応は、「亜鉛還元反応」として数十年にわたって知られていました。

そして、現在、住宅の屋根に付いている太陽電池のパネルの原料としても使う事ができる上に、割安な製造反応の経路として期待されていました。しかし、この反応式について、反応経路や速度などについての 情報が十分に分からなかったのです。これにより、亜鉛還元反応の実用化(工業化)には、困難な状況が続いています。

高校生「私の家にも太陽電池パネルついています!周りの家にも付いているし、太陽光発電所も最近は建設されていますよね。とても必要な技術だと思うのですが、化学システム工学科では説明であった反応経路や速度の謎を解明できたのですか?」

化学工学者.CE「それは研究を進めていく過程で、反応条件の1つである反応速度によって、多様なシリコン材料を得られることが分かったそうですよ。」

■「亜鉛還元反応」で得られる多様なシリコン材料の例

化学システム工学科では亜鉛還元反応について、3つの反応条件から3種類のシリコンを作る事に成功しました。結晶の形の違いを見てみましょう。

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図3 反応条件1によってできた結晶の様子 (引用:稲澤研究室HPより抜粋)

図3をみると、針状に見えますよね?この図3のような結晶は単結晶で、とても純度が高いのです。(99.999%)この結晶は太陽電池などに応用することができます。

次に図4を見てみましょう。

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図4 反応条件2によってできた結晶の様子 (引用:稲澤研究室HPより抜粋)

図4を見ると、さっきの図3とは違い大きさも小さい上に、イガグリのような形をしています。さらに紫外線を当てると、赤く発光します。この結晶は化学センサーといわれるイオンや分子を認識する(調べる)ための分析法に使われています。また、バイオイメージンクと呼ばれる細胞・組織または個体レベルでタンパク質などを解析するための方法で利用される材料に応用することができます。

さらに図5を見てみましょう。

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図5反応条件3によってできた結晶の様子 (引用:稲澤研究室HPより抜粋)

図5を見ると、図3には似ていますが、さらに細くなり、糸のような様子になっていますよね?この図5の結晶は、熱電変換素子と呼ばれる熱と電気を交換するための部品に応用がすることができます。

このように、反応する条件を変えることで1つの反応式なのにもかかわらず、様々な形に変身させることができるのです。

高校生「学校の授業では反応式を見たときに、生み出される反応物は1つしかないイメージでしたが、条件を変えることでいろいろな形にできるのですね。形や性質を変えることで、いろいろな場面で利用することができるし、すごい研究ですね!」

CE「興味を持ってもらえて幸いです。化学システム工学科では、いろいろな反応条件で生み出される物質の性質を利用して 新たな機能を持つ材料を応用展開を考えているそうですよ。この説明で興味を持った方はぜひ調べてみてみてくださいね!」

(文責:学部3年生MK、訂正:学部4年生MI)

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